アブラムシから農薬を考える

昨日のアブラムシについての続編。

アブラムシが着くかどうかは機会的なところがあるけれど、その作物上で大量増殖するかどうかは作物自体の生理状態があるアブラムシに好適かどうかが鍵になる。アブラムシはブフネラの共生によって栄養を体内で加工しているとはいえ、元になるのは作物の組織液に含まれるアミノ酸や糖分、ミネラル。特に重要なのはアミノ酸。普通の植物のなかにアミノ酸がたっぷり含まれているのは稀なことで、アミノ酸というのは、根から吸い上げた無機態窒素と葉で光合成した炭水化物(糖分)を結びつけて葉で合成しており、出来たアミノ酸は師管を通って、必要な組織(根や果実や生長点)に転流されて、タンパク質となり、新しい細胞として組み立てられる。新しい細胞が生み出されることがスムーズに進んでいるとき、光合成が盛んで転流も流れよく行われていると、アミノ酸は作物体内にそれほど多くは蓄積しない。アブラムシがそういう健康な植物の汁を吸ってもそんなに栄養価は高くないから、着きはしたけど爆発的に増殖するってほとにはならない。作物が不健康な状態というのは、何らかのタンパク質合成や生長抑制、光合成不足、あるいは窒素肥料のやり過ぎ、水不足や過湿、塩基過剰土壌などの障害があるってこと。そういうときにアミノ酸のタブ着きがおき、それがアブラムシの格好の餌になるのだ。

普通の農家さんでは、農薬でアブラムシを直接駆除するって方法で防いでいる。しかし農薬とて万能ではなく、短期の対策として考えても作物が不調に陥っていると、農薬をかけてもかけても増殖が止まらない。なにせアブラムシは大量増殖するときには、単為生殖といって、交尾することなく子どもを次々と産むことができるので、生き残ったアブラムシからまた子どもが生まれてすぐに数が回復してしまうのだ。だから、作物生理の不健康をそのままにして農薬だけで密度を低く抑えようと思うと、かなり頻度高く、的確な薬剤撒布が必要で、しかも特定の卓効を示す薬剤があったとしても、生き残ったアブラムシがどんどん薬剤に強くなっていってしまうことがあり、次々と高価な新しい農薬が必要になるのだ。アブラムシに効く農薬は天敵も殺してしまうスペクトラムの広いもの(非選択性的ってこと)が多くて、多用すると防除が生態系を不安定にする要因をつくってしまうというスパイラルに陥る。アブラムシに耐性がつくと、農薬が効かなくなり、使う量や頻度が増えていってしまう。農薬を撒くととりあえずアブラムシが抑えられるっていうのは、往々にして作物の健康に配慮しない栽培になりやすい。アブラムシの大量増殖に適した作物の状態を放置し、さらにアブラムシ自体が農薬に強くなったり、アブラムシの増殖を抑えていた生物のつながり(天敵の存在)を壊してしまう。

農薬の害はそれ自体の毒性のことよりも、作物と向き合う姿勢、作物生理や作物生育を成り立たせている生き物の世界を気遣えない農業を生み出すってところにあるのではないかと思うし、悪循環に陥る手段に頼り切ってしまうのは好転する可能性を自ら断ってしまうってことであり、それを考えもせずに使い続けてしまう農業界でいいのか人類ってことだと思う。最近は特定の害虫にだけ効く選択性農薬っていうのが主流になってきているので、かつてよりはむやみに虫を殺さないので少しはましになっているのだけれど、その少しはましってどういうことなのか、結局は生態系を意識しなければ化学物質だけで農業は出来ないってことが多くの農業者に正しく伝わらなかったら、やっぱり自分の圃場の自然をちゃんと観察して農業を営むっていう姿勢は育たないのではないかな。農薬をつかわなければいいって単純な話ではなく、自然の営みの1つである農業として、当たり前の考え方をしましょうってことなんだけどね。

さてアブラムシについて。 微生物農薬は悪循環に陥りにくくく、使い方によっては耕地生態系のバランスを作物が健全になる方向に回復させる手段になりうる方法の1つと言える。ペキロマイセス・テヌイペス菌やボーベリア・バシアーナ菌のうち、標的となる害虫に特異的に感染する能力の高いものが選抜され製品化されている。感染して死んだ虫から胞子が放出されるので、うまくいくと次々とアブラムシに感染が広がって、アブラムシ密度が低く維持できるようになる。全滅まではしなが、大量増殖しなくなる。標的以外の虫には殺虫効果がないか弱いので、アブラムシが大発生しそうな状態になったときはとても有効と言える。

作物の健全育成、作物の生理状態を健康に保ち、耕地生態系にも天敵やただの虫がいっぱいいて、アブラムシが代増殖しにくい環境をつくることを前提にして、もしアブラムシが大量発生する兆しがあるときに利用するとしたら、より安定してアブラムシを含む害虫密度が低く維持できるだろう。予防的に使っても良いのだろうけど、天然の寄生蜂やテントウム、ヒラタアブ、クサカゲロウなどがある程度いて、アブラムシがいても増殖していかないことが明らかなら、これらの薬剤は切り札としてとっておいても良いだろう。切り札があるっていうのは、周囲から害虫が飛び込んでくる畑の位置環境や昨今の不安定な気象条件のもとでは有効な手段だと思う。

しかし(しかも?)、この切り札には弱点もあって、低温や乾燥する条件では、菌を撒布してもアブラムシに感染できない。天然の天敵や作物自体の健康さで安定を目指しつつ、非常時に奥の手として使いたいところだけど、条件によっては使えないときがある。これからの季節なんかはかなり微生物には不利ってことになる。
そうなると、微生物系が使えない場合は、天敵生物資材が良いのだろう。コレマンアブラバチ(アフィパール)とショウガクタマバエ(アフィデント)っていうアブラムシに寄生する生物が市販されている。低温期はコレマンアブラバチ、高温期はショウガクタマバエの方が働きが良いらしい。これを放飼して圃場で増殖させる。天然にもこれらの生物はいるけれど、アブラムシが増えないと増えないので、天然の増殖を待っているとアブラムシによる実害が出てしまう。なので、市販のこれらの生物を放して、一気に密度を上げてしまうように一斉にアブラムシに寄生させる。バンカープランツなどを使って餌となるアブラムシを養って、土着天敵を増やす策をとれば、購入天敵はそのうち土着の天敵と区別着かなくなるかもしれないが、要は安定して天敵が定着して、アブラムシの大量増殖がなくなればいいので、そうやって定着・増殖させる方法を併用すると良いだろう。

切り札微生物にも弱点があったり、天敵も天敵自体の生態や棲息環境に配慮しなければならなかったり、今までの化学農薬に比べたら面倒くさい。でもそれがミソだろう。効果が出るように作物や周辺環境を観察し、それを前提にして働く仕組みっていうのは自然界そのもの。そうやって条件をつくりあい支え合って生きている。作物も人間もその一員だもの。そのことを共感して作物に向き合えるようになると、細やかな気づきが生まれ、作物に合わせた管理が出来るようになると思う。それは意識が作物を育ててるって段階への入り口になるのかなって思う。

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