アブラムシを考える

アブラムシは作物栽培で最も初歩的な害虫だけど、天敵がある程度定着しているような安定した生態系を整えていっても、最後まで随所随所で出てきて悩みどころになる虫さん。作物自体がある程度健康だと問題にならないことも多いけれど、ちょっとした管理ミスや悪天候などで作物が体調を崩すと一気に増殖して、そこそこ健康だったものにまで繁殖し出すと手がつけられなくなったり、葉が奇形になったり、ウイルスが感染するなどして作物の回復が著しく困難になってしまうことも多い。

もちろん通常は農薬で防げることが多いのだけど、短期の対策として考えても農薬とて万能ではなく、作物が不調に陥っていると、農薬をかけてもかけても増殖が止まらないとか既にウイルスに感染してしまって手遅れなんてこともある。作物生理や生態系を全く考慮せずに農薬だけで密度を低く抑えようと思うと、かなり的確な薬剤撒布が必要で、しかも特定の卓効を示す薬剤に対して薬剤抵抗性が発達しないように注意していく必要がある。アブラムシに有効な古い農薬は多いのだけど、古い時代の農薬は天敵も殺してしまう非選択性のものが多くて、防除が生態系を不安定にする要因をつくってしまうというスパイラルに陥る。

微生物農薬はその解決策の1つで、ペキロマイセス・テヌイペス菌(ゴッツA)とボーベリア・バシアーナ菌(ボタニガードES)はアブラムシに感染して虫の体をカビさせる微生物(糸状菌)。感染して死んだ虫から胞子が放出されるので、うまくいくと次々とアブラムシに感染が広がって、アブラムシ密度が低く維持できるようになる。全滅まではしなが、大量増殖しなくなる。多くの天敵生物には殺虫効果がないので、アブラムシが大発生しそうな状態になったときはとても有効と言える。

作物の健全育成、作物の生理状態を健康に保ち、耕地生態系にも天敵やただの虫がいっぱいいて、アブラムシが代増殖しにくい環境をつくることを前提にして、もしアブラムシが大量発生する兆しがあるときに利用するとしたら、より安定してアブラムシを含む害虫密度が低く維持できるだろう。予防的に使っても良いのだろうけど、天然の寄生蜂やテントウム、ヒラタアブ、クサカゲロウなどがある程度いて、アブラムシがいても増殖していかないことが明らかなら、これらの薬剤は切り札としてとっておいても良いだろう。切り札があるっていうのは、周囲から害虫が飛び込んでくる畑の位置環境や昨今の不安定な気象条件のもとでは有効な手段だと思う。

しかし弱点もあって、低温や乾燥する条件では、菌を撒布してもアブラムシに感染できない。天然の天敵や作物自体の健康さで安定を目指しつつ、非常時に奥の手として使いたいところだけど、条件によっては使えないときがある。これからの季節なんかはかなり微生物には不利ってことになる。

そうなると、微生物系が使えない場合は、天敵生物資材が良いのだろう。コレマンアブラバチ(アフィパール)とショウガクタマバエ(アフィデント)っていうアブラムシに寄生する生物が市販されている。低温期はコレマンアブラバチ、高温期はショウガクタマバエの方が働きが良いらしい。これを放飼して圃場で増殖させる。天然にもこれらの生物はいるけれど、アブラムシが増えないと増えないので、天然の増殖を待っているとアブラムシによる実害が出てしまう。なので、ある程度一気に密度を上げてしまうように、。市販のこれらの生物を放して、一斉にアブラムシに寄生させる。バンカープランツなどを使って餌となるアブラムシを養って、土着天敵を増やす策をとれば、購入天敵はそのうち土着の天敵と区別着かなくなるかもしれないが、要は安定して天敵が定着して、アブラムシの大量増殖がなくなればいいので、そうやって定着・増殖させる方法を併用すると良いだろう。


ところで、

微生物系では今のところ、糸状菌タイプのもの。つまり冬虫夏草のように昆虫に寄生するカビをつかった微生物農薬しかないのだけど、アブラムシっていうのは、体内に「ブフネラ」っていうバクテリアが共生していて、その働きによって、植物の樹液を吸うだけで、微生物ブフネラがアブラムシに必要な栄養を作り、そのおかげで生きていられることが分かっている。ブフネラは大腸菌の近縁種らしい(だいたい動植物と寄生や共生するのはグラム陰性菌が多い)。このブフネラとアブラムシとの共生は卵胎生であるアブラムシの体内で行われてしまうので、介入するのは難しそうなのだけれど、アブラムシは殺さないけれど、ちょっとだけ増殖が遅くなるブフネラを増やして播くことによって、共生菌を入れ替えて、生かさず殺さずな関係を作り直すっていうのは出来ないのかな。
あるいは、アブラムシの1個体の生存性を高めるけど、蟻に好まれなくなるような臭いがするようになるとか。今までの殺すっていう発想ではなくて、生態系における位置づけを少しだけ変わってもらう働きかけをする農薬。
前提は天敵が住み着く生態系の創造。そのもとで有効になるサポートに徹する農薬ってどうだろうね。

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わたわた(いしわたかおる)です。料理と野菜を育てることが大好きです。何気ない日常も全てこの地球の表現の1ページ。生命と進化の星、地球を表現すべく、日常の1つ1つに心を込めて「生きる」をやっていきます。

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